乗鞍岳の山バッジ

乗鞍岳は飛騨山脈南部に位置し、長野県松本市と岐阜県高山市にまたがる山域の総称です。最高峰は標高3,026mの剣ヶ峰で、朝日岳、薬師岳、摩利支天岳、富士見岳など複数の峰で構成されており、総計で23の山頂があるとされています。日本百名山、新日本百名山に選定されており、中部山岳国立公園内に位置しています。

山域は南北約15km、東西約30kmと広大な裾野を持ち、飛騨山脈の中では最も広い山域となっています。火山活動によって形成された地形で、複数の火山錐が集合した成層火山です。火山活動の記録は約1万年前まで遡るとされ、現在も活火山に分類されています。山頂付近には権現池をはじめとする複数の火山湖があり、権現池は標高約2,840mに位置する日本有数の高所湖沼となっています。

山名の由来は、飛騨側から見た山容が馬の鞍に似ていることから「鞍ヶ峰」と呼ばれ、それが転じて乗鞍岳となったとされています。飛騨高山の市街地からその大きな山容を望むことができ、古くから地域のシンボルとして親しまれてきました。

乗鞍岳の大きな特徴として、標高2,702mの畳平までバスでアクセスできる点が挙げられます。岐阜県側の乗鞍スカイラインと長野県側の乗鞍エコーラインという二つの山岳道路が畳平まで通じていますが、自然環境保護のため両路線ともマイカー規制が実施されており、一般車両は通行できません。岐阜県側からは平湯温泉またはほおのき平バスターミナル、長野県側からは乗鞍高原からシャトルバスが運行されています。畳平から剣ヶ峰山頂までの標高差は約320mで、登山時間は片道約1時間30分程度となっており、3,000m級の山としては比較的容易に登頂できる山として知られています。

山頂からの展望は良好で、槍ヶ岳、穂高連峰をはじめとする北アルプスの山々、御嶽山、南アルプス、中央アルプス、八ヶ岳など、周囲の山岳を広く望むことができます。天候に恵まれれば富士山も遠望できます。剣ヶ峰は本州における太平洋側と日本海側を分ける中央分水嶺上の最高峰でもあり、梓川、高原川、飛騨川などの河川の源流域となっています。

高山植物が豊富な山としても知られており、畳平周辺にはお花畑と呼ばれる高山植物の群生地が整備されています。コマクサ、イワギキョウ、ヨツバシオガマ、キバナシャクナゲなど約60種類の高山植物が見られ、7月から8月にかけて開花のピークを迎えます。また、特別天然記念物であるライチョウの生息地でもあり、約150羽から200羽が生息しているとされています。

畳平には標高2,702mの宿泊施設があり、山小屋だけでなく設備の整った民宿が営業しています。夏季には早朝のご来光を見るための専用バスも運行されており、山頂付近での日の出観賞が人気となっています。乗鞍スカイラインは5月中旬に開通し、開通直後から6月中旬頃までは道路脇に雪の壁が見られます。10月下旬まで営業が続きますが、9月下旬から10月上旬にかけては位ヶ原周辺でナナカマドやダケカンバの紅葉が見られる時期となります。