仙丈岳の山バッジ

仙丈岳は南アルプス北部に位置し、長野県伊那市と山梨県南アルプス市にまたがる標高3,033mの山です。南アルプスに連なる3,000m峰の中では最も北に位置しています。北沢峠を挟んで北東側には甲斐駒ヶ岳がそびえ、両山は対照的な山容を持つことで知られています。日本百名山、新日本百名山、花の百名山、新・花の百名山、山梨百名山、信州百名山に選定されており、南アルプス国立公園の区域内にあります。

山の地質は赤石層群と呼ばれる地層から構成され、硬砂岩、粘板岩、チャートなどの岩石で形成されています。この地質は南アルプスの大部分に共通する特徴です。山頂付近には小仙丈岳、大仙丈岳という小ピークがあり、大仙丈岳の南側からは塩見岳へと続く仙塩尾根が延びています。この尾根は長大な縦走路として知られ、一部では俗称でも呼ばれています。

仙丈岳の特徴的な地形として、三つのカールが存在します。山の東側に小仙丈沢カール、北側に藪沢カール、南東側に大仙丈沢カールがあり、これらは氷河地形の痕跡とされています。これらのカール周辺は緩やかな斜面が広がり、全体として穏やかな山容を形成しています。一方、西側斜面は急峻で、岳沢は沢登りや冬季の氷瀑登攀の対象となっています。この地形的特徴から、甲斐駒ヶ岳との対比において異なる呼称で表現されることがあります。

高山植物が豊かな山として知られ、7月上旬から中旬にかけてカール周辺では多様な花々を観察することができます。ただし、7月中旬頃までは藪沢周辺に残雪が多く見られるため、雪上歩行に慣れていない登山者は尾根コースを選択することが推奨されます。

山頂からの展望は良好で、富士山、北岳、間ノ岳、穂高岳、槍ヶ岳といった日本の標高上位の山々を同時に望むことができる貴重な地点となっています。また、八ヶ岳、奥秩父、中央アルプス、北アルプスまで広範囲の山岳展望が得られます。

登山ルートとして最も利用されるのは北沢峠を起点とするコースです。北沢峠の標高は2,030mで、山頂までの標高差は約1,000mとなります。長野県側からは伊那市の戸台から、山梨県側からは広河原から、それぞれ北沢峠までバスが運行されています。北沢峠からは小仙丈尾根を経由する稜線ルート、藪沢ルート、地蔵尾根ルートなど複数の登山道が整備されています。

北沢峠周辺には複数の山小屋があり、仙丈岳と甲斐駒ヶ岳を組み合わせた1泊2日の登山行程も人気があります。近年、北沢峠付近の山小屋は完全予約制を採用しています。毎年7月初旬には北沢峠で開山祭と長衛祭が開催されています。長衛祭は、南アルプス北部の登山道開拓や山案内人として活躍した竹澤長衛の功績を称える行事です。